決算賞与は期中に払いましょう

 巷では、景気に関してプラスの話しが多くなっており、その波に乗れた中小企業では通常の賞与の他に「決算賞与」の支給を考えている経営者の方もいることでしょう。

 税引前当期純利益が100万円あった(単純に利益全部がキャッシュとします)として、法人実効税率を30%とした場合、税引き後で手元に残るお金は70万円です。かといって、100万円全部を賞与で支払ってしまうと、税金は0円ですが手元にお金は残りません。なので、経営者の方々は、利益のうちどれくらい賞与として配分するかあれこれ考えることになります。

 

 

 ここで、決算賞与が損金として認められる要件を見てみます。

 

 参考:国税庁「No.5350 使用人賞与の損金算入時期」

 

 要するに、まとめると下記の通りになります。

  1. 決算月で未払計上
  2. 支給する従業員に通知
  3. 事業年度の翌日から1カ月以内に支給

 ・・・結構クリアするのに手間が掛かります。特に2というのは、「支給日に在籍するものに支払う」などと就業規則に記載されている場合、通知額と支給額が異なる余地があるため決算賞与の要件を満たしません。

 

 それでは、急いで就業規則を変えなければならないでしょうか。

 

 確かに賞与を未払計上するということであれば、就業規則を変更しなければなりません。賞与に関する条文を精査して書き換えて役所に提出することって簡単にできるでしょうか。思いのほか面倒ですし、急いては事を仕損じます。

 それならば発想を変えて、決算賞与を未払計上せずに、いっそのこと期中に支払うことを第一に考えましょう。その方が楽です。移動をする必要もありません。

 

 何を言ってるんだと思うでしょうが、繁忙期を決算月にしている会社でない限り、もう11カ月目には大体の当期利益の予測が出来ているはずです。決算月は、閑散期のほうが事務負担が減るため、あえて決算月を調整している会社も多いと思います。

 11カ月目に決算賞与のことを考えられると、2つのメリットが新たに生まれます。

  1. 所得拡大促進税制の適用の可否を事前に判断出来る
  2. 賞与社会保険料の未払計上が出来る

 1については、2期在籍社員の前期と今期の平均給与が1円でも上回ることが要件の一つとされているので、余裕をもって計算することが出来ます。また、2については、期中に賞与を支給すれば、その社会保険料のうち会社負担分約15%が新たに経費に計上出来ます。

 

 一度、期をまたがないで決算賞与を支給してみてはいかがでしょうか。就業規則の変更は、期中に賞与を支給した後にゆっくり考えてもいいと思います。

 

 

 最後に、目安となる賞与の求め方です。

 

 A:税引前当期純利益 B:決算賞与額 C:税引後当期純利益  税率30%と仮定します。

 

 (A-B)*(1-0.3)-0.15B=C  ※0.15は会社負担分の社会保険料約15%

 

これを整理して賞与を求める式にすると、下記のようになります。  

 B=(0.7A-C)/0.85

 

 例えば、税引前当期純利益が100万円で、税引後の当期純利益を50万円にしたい場合には、

 B=(0.7*100-50)/0.85=23.52

 となり、約23万円を賞与として支給すればよいことになります。参考にしてみて下さい。

 

 

 以上、ご精読ありがとうございました。