労働保険事務組合とは

 中小企業の事業主の方は、何となく聞いたことのあるようなないような響きだと思います。「~協会」など何となくお役所のような名前で、「経営者も労災に入れます」と加入を促す団体です。

 今でこそ、ほとんどの事業所が労働保険に加入してはいますが、昭和30年代は小規模の事業所は任意加入でした。任意となると、加入の有無で受けられる補償に格差が発生してしまうことは避けられず、後に全事業所の労災保険加入が要請されることとなりました。

 これを背景として、昭和40年に労働保険事務組合制度が創設され、事業主団体の構成員である事業主の委託を受けて、労働保険に関する各種届出を事業主に代わって処理することが出来るようになりました。

 

 

 

 

 労働保険事務組合に委託できる事務の範囲は以下のとおりです。

 

(1)概算保険料、確定保険料などの申告及び納付に関する事務

(2)労働保険の新規適用に関する事務

(3)労災保険の特別加入に関する事務

(4)雇用保険の被保険者に関する届出

(5)その他

 

 ほとんどの労働保険関係の処理を行います。ただし、次の業務を行うことが出来ません。

 

(ア)印紙保険料に関する事務

(イ)労働保険の保険給付に関する事務

(ウ)雇用保険二事業に係る事務

 

 労災の保険給付や、雇用継続給付(育児休業給付や高齢者に関する給付金等)は行えないということですね。

 

 上記だけをみると自分のところで全部できますが?という質問がでてきそうです。

 事務組合に委託することの意味とは何があるのでしょう?それは次の2つになります。

 

(A)事業主や役員、同居の親族も労災保険に加入できる。

(B)労働保険料が40万円未満でも3分割納付が可能になる。

 

 事務組合の最大のメリットは、何といっても(A)です。現場で従業員同等の業務を行っている限りは、加入したほうが断然お得です。よく、「民間の傷害保険でいいのでは?」ということをおっしゃる方もいますが、労災保険は国が強制している保険なので何より保険料が格段に安いです。従業員保護という観点から、2つめの保険という意味合いで民間保険を利用するのは構いませんので、まずは、お財布と相談しながらですね。

 (B)は、事業を開始した時などは大変助かる制度ですが、事業が軌道に乗った場合にはあまり気にすることはなくなるでしょう。

 

 最後に(A)についての補足です。代表者が加入できたからといって、どんな場面でも労災保険の給付対象になるかというとそうではありません。あくまで、労働者の業務に準じた範囲内のみ労災保険の対象となります。役員としての業務中に起こった事故に関しては原則補償されないということをご留意下さい。

 

ご精読ありがとうございました。